あゆみ

埼玉県臨床細胞学会の歩み
  上田 善彦
 埼玉県臨床細胞学会は,1981年に発足しました.当時は,がんが死亡原因の第一位になり,がんに関する関心が高まるとともに,がんの早期発見における方策の確立が急務とされた時であり, 特にがん検診や一般医療機関での細胞診検査が広く普及し,さらに1982年に制定された老人保健法の実施とあいまって,膨大な量の細胞診検査が必至となっている時でした.
 全国的な細胞診需要の増加に対して細胞診従事者の質,量ともに不足している現状であり,このような社会的背景や状況は埼玉県においても例外ではなく”埼玉県における臨床細胞学の進歩と普及を目的とし,会員相互の親睦を図る”という理念のもと日本臨床細胞学会埼玉支部を結成するに至りました.
 支部の結成にあっては田島基男先生を中心に,当時埼玉県医師会産婦人科医会会長の藤間利行先生を支部長,天神美夫先生を顧問にお願いし,理事15名,評議員23名,監事2名で発足しました. また,検診業務に必要な細胞検査士の養成に協力するということで,埼玉県医師会子宮がん検診部会からの多大な経済的な支援も頂いていました.
 発足から30 年経ち,支部長も初代の藤間利行先生から,塚原和夫先生,青木淳一先生,高濱素秀先生,森吉臣先生,菊池義公先生,山内一弘先生,上田と引き継がれています.当初少なかった会員数も現在では医師会員(専門医85名,MD21名),技師会員(CT304名)の計410名の大所帯に膨れ上がっております.
 当初年2回の研究会を実施していた支部の事業も,徐々に活動が広がりました.現在では,学術集会,ワークショップ,ワークショップドクターコース,細胞診講習会,山梨・埼玉合同講習会などを定例として開催しています.支部会誌も毎年定期刊行されています. 近年ではホームページも立ち上がり,会員に広く利用されています.
 支部会誌の発刊に際しては,初代編集委員長佐々木寿男先生が恥ずかしくない支部会誌を作ろうと努力され,現在まで27巻を発行しています.中でもワークショップで取り上げた多くの症例をカラーで残そうと第10巻からは前年に実施した内容をカラーで掲載しています.
 先人たちの努力と臨床医・病理医・細胞検査士のチームワークの良さで,埼玉県臨床細胞学会は発展を続けています.2000年に高濱先生が第39回日本臨床細胞学会秋期大会を主催されたことにより本学会の絆はますます強くなったと思います.いろいろな研修会を実施するにあたり施設や立場(医師・細胞検査士)の垣根を越えてより良い内容にすべく自由な意見を出し合い頑張っています.これからも埼玉の良き伝統を大切にしながら頑張っていきたいと思います.