高野 政志
埼玉県臨床細胞学会HPをご覧頂きまして、まことにありがとうございます。
本学会は1981年に発足し、多くの先人たちのご努力によって会員数が増え、かつ学術活動も活発となってきております。今回、会長就任にあたって、本会の目標を「埼玉から細胞診を発信しよう!」としました。学会活動は埼玉県内での細胞診専門職の育成のために必須の事業でありますが、さらに日本、世界へ日頃の成果を発信することで、現在の自分たちの立ち位置の確認、今後の課題が明らかになると思います。自分への奮起もこめてこの目標をたてましたので、何卒よろしくお願いいたします。
さて、細胞診に関しては、しばしば組織診より一段劣るものと見られがちですが、これは全くあてはまりません。細胞診の多くはひろい荒野で足跡をみて敵か味方かを判断するようなもので、いわゆる「スクリーニング」であるのに対して、組織診はみつかった鉱山で採石して成分を確認するような「確認作業」と言えます。どちらもなくては西部の開拓はできませんでした。婦人科領域では、卵管癌の診断において、子宮内膜細胞診では腺癌が検出されるのに、子宮内膜掻爬組織診ではまったく癌が検出されないという現象がしばしばみられます。細胞診でしか検出できないケースは他領域にも多々あるものと推察され、期待される要望は増すばかりでしょう。
一方、検体数で筆頭と思われる子宮頸部検体において、激動の時代が参ります。子宮頸がん検診にHPV単独検診が導入されることで、一次検診検体に対するスクリーニング作業は確実にへってくることが想定されます。さらにHPVワクチン接種がひろがってくると子宮頸がん、前がん病変の総数が確実に減少してきます。その結果として、子宮頸部の正常検体をスクリーニングする業務は、近い将来なくなるかもしれません。しかしながら、予防手段のない多くのがんの症例数は、高齢化によって確実に増加していること、遺伝学的特徴にもとづく個別化治療が多くのがんで広がってきており、一枚の検体に対して時間をかけて観察する必要性が増し、さらには免疫染色細胞診など、いろいろな条件のもとで深く、詳細にみることが増えていきます。細胞診の役割は変化していき、細胞診断の重要性はさらに増します。この激動の波にしっかり乗って、うまく乗り越えて行きましょう。
さて、そのためには変化を感じつつも、通常業務をしっかり遂行していくこと、若手の教育推進につとめ、できれば本会の会員も増えていくよう、よろしくお願いいたします。3年後の2027年(令和9年)秋には埼玉県で関東臨床細胞学会学術集会も予定されています。本会としても無駄は可能な限り省き、効果的に教育・研究ができる環境を提供できるよう、皆さんからのご意見をいただきながら務めていきます。また、お気付きの通り、会員管理や会費徴収などの業務を外部に委託して皆さんが使いやすいようになっていると思います。いろんな業務がSDGsに沿った内容となり、会員の皆さんが学問としての細胞診に集中出来るようにしていきます。また、昨年から埼玉賞が新設されたこともあり、やる気もバックアップしていく体制ができつつあります。どうか、埼玉から細胞診を発信していきましょう! 役員一同、精一杯頑張る所存ですので、何卒、よろしくお願いいたします。